チカと南の日常1

南への本日のエロ妄想お題
「ソファーの上で」
「指で触り合うだけ」
「オカズにしてください」





めずらしいことに、チカが風邪を引いた。
「馬鹿と何とかは風邪を引かないって言うけどな……」
「聞こえてるよ、センちゃん」
 軽く咳き込みながら、チカが顔をしかめる。銀色のベリーショートにダイヤモンドの一粒ピアスが似合う男なんて、そうそういないだろう。彼こそ、多くの店がひしめく六本木で絶大な人気を誇るSMクラブ・ゼルダのスタープレイヤーなのだが、やはり人間なのだ。寒い時期になると、当たり前に風邪を引く。
 土曜の午後、チカと住むマンションのリビングでノートパソコンを開いていた月刊スポーツ誌の編集者である南は、チカが脇に挟んでいた体温計を抜き取った。
「三十七度五分か……ちょっと下がったかもな。お腹減ってないか? おかゆでも作ろうか」
「ううん。いまはきみがそばにいてくれればいい」
 殊勝なことを言って、ソファに寝そべり、毛布を二枚かぶったチカが床に座る南に頭を擦りつけてくる。
 いつもいつも過激な振る舞いに腰が抜けるのだが、意外にも可愛いところがあるのだ。
 ――風邪で気も弱ってるのかもしれないな。
 根元まで綺麗に染まった短髪を優しく撫でてやった。ほんとうはベッドで寝たほうがいいと何度も諭したのだが、リビングのソファに座り、ノートパソコンで仕事を続けようとした南に「そばにいたい」とついてきたがったのだ。
 仕方ないとため息をついて本物の暖炉に火を入れ、風邪薬をチカに飲ませて毛布をかけてやった。
「……ねえ、センちゃん。仕事、おもしろい?」
「うん、まあな。いまのところは雑務処理で頭がぱんぱんになりそうだけど」
「そっか……あのさ、……触りっこ、しない?」
「は? な、なんだ突然」
 驚いて肩越しに振り向くと、熱で潤んだ目をしているチカが切々と訴える。
「だって、ここ最近お互い忙しかったから全然してないんだよ。僕はね、きみをオカズにして何度オナニーしたか。羞恥にふるえる千宗の胸を散々嬲りながら、ディルドーで犯したり、壁から吊ったり……四つん這いにさせたきみの手足に拘束具をつけて身動きが取れないようにしたら卑猥な言葉を散々言わせるとか。『俺のお××ぽをしゃぶってください』とか『おっぱいをもっと吸ってください』とか言わせた最後に、やっと挿入してあげて、ゆっくり動かしてあげる……そんな妄想で達する瞬間は確かに気持ちいいけど、きみと一緒にいけないのはやっぱり寂しい。だからねえ千宗、お願い、乳首見せて」
「お、おまえな……!」
 チカの長広舌は、風邪のウイルスでも太刀打ちできないようだ。
「見せてくれるだけでいいから」
「……それで終わるおまえじゃないだろ」
「お願い。ちょっとだけ」
 掠れた声に懇願され、深くため息をついてノートパソコンを閉じる。こうもあからさまなお願いをされては、仕事にならない。
「……ちょっとだけだからな」
 彼に向き直り、汗で湿ったシャツのボタンをひとつ、ふたつとはずすと、毛布にくるまったチカがもぞもぞと近づいてきて、はぁっと熱い吐息を乳首に吹きかける。
「う、あ……っ」
「敏感だね、千宗」
「だって、おまえの息、いつもより熱くて……」
「風邪のせいかな? ね、きみのここ、生意気に勃っちゃってる。僕が弄る前から赤くなってやーらしい……指で触ってもいい? 少しだけ」
「ほ、……ほんとに、少しだけ、か」
「うん」
 チカが嬉しそうに声を弾ませる。
 自分でも馬鹿な会話をしているなと思う。チカに身をゆだねたら最後、少しだけが、最後まで、となっていてもおかしくないのだ。
 ソファに乗ってチカにまたがり、うっすら汗が浮く胸をせり出すと、チカの長い指が乳首をきゅうっとつまみ、くりくりときつめに揉み込む。少し痛いぐらいにされるとたまらなく感じてしまうから、やめてほしいのに。
「あ、っ、ん、んっ……ぅッぁ……馬、鹿、そんな、つまみ方、したら……っ」
 押しつぶされて、揉まれて、つつかれて。チカが美味しそうに舌なめずりする仕草にも、身体が熱く燃え立ってしまう。
 もっと、してほしい。もっとはっきりしたなにかをしてほしい。
「チカ……、おまえも、ここ、大きくなってる」
 下肢に手を伸ばすと、ぐんと盛り上がった塊が毛布を押しのけている。毛布の隙間から手を挿し入れて探った。パジャマのズボン、下着の中へと指を押し込み、ぬるっと濡れた感触を知ってしまったらもう止まれない。根元から扱いてやると、チカのそれは相当な大きさに育つ。
 ――欲しい、でも、風邪を引いてるのにひどいことはできない。
「千宗、僕が欲しい?」
「えっ」
 ずばり言い当てられて驚くが、巨根を扱く手は止まらない。開ききったエラをなぞり、凶悪に浮き立った筋をくちびるで吸い取りたい欲望をなんとかなだめ、チカの髪を掴んで荒っぽくくちづけた。そして、身体中を乱暴に擦りつけた。
「ふふっ、今日の千宗、獣っぽい。しばらくお預けになっていて、きみも限界なのかな。……ああもう、前がガチガチ。こんな状態ではい終わり、っていうわけにはいかないよね。千宗、抱かせて。僕のものを千宗の中でもっと大きくさせて」
「……なら、おまえの風邪、俺に移せ。そしたら早く治る」
「それ、もしかしてきみ流の口説き文句? 風邪引く暇もないほど、愛してあげるよ。おいで、千宗」
 にこりと笑うチカの策にまんまとはまったと臍を噛みたいところだが、いまは狂おしく愛し合うことしか頭に浮かばない。
 いっそ、ふたりして風邪で撃沈してしまえばいい。
 そんな考えにちいさく笑いながら、南はチカとの悩ましいくちづけを繰り返し、ソファに倒れ込んでいった。