結城と和紗の日常1

「畳の上で」
「頭がおかしくなる」
「あなたの玩具になりたい」





「うわぁ、こんなに広いんだ。やっぱり、新しい畳のにおいっていいですね……」
「そうだな。昨日入れたばかりなんだ」
 結城の隣で、部下軒恋人軒花嫁の和紗が気持ちよさそうに深呼吸している。それから、にこりと笑いかけてきた。
「社長室に和室が用意されてるなんてすごい。こたつまであるんですね」
「外国から来た客人にいいかなと思ったんだ。入ってみるか」
「ぜひ」
 つい最近、社長室の隣に客人を招く意味合いで、純和室を作らせた。襖を開けると普段の和室と繋がっている仕組みで、中にはこたつが設えてある。ここではみんなくつろいでもらおうという考えだ。
 玩具会社を経営する結城のもとを訪れる客人は多く、中でも、精密な仕掛けを知りたいと諸外国からの客が足を運ぶ。結城の会社は一般的なおもちゃを作る半面、その技術の高さを生かして大人の玩具にも力を入れていた。とくに、和紗が開発に携わるようになってから、さまざまな機能を載せたバイブレーターが次々とヒットを飛ばしている。
 今日はそんな彼をねぎらうため、新しくできた和室に招いたというわけだ。
 靴を脱ぎ、いそいそとこたつに入る和紗は嬉しそうだ。斜め向かいに結城も座り、みずから茶を淹れてやった。
「ほら、熱いから気をつけろ」
「あ、すみません。社長にお茶を淹れていただくなんて光栄です」
 いただきます、と微笑み、和紗が湯飲みを手にする。少しだけうつむいたその首に赤いしるしを見つけて、「ここ」と指でつついた。
「昨日の痕か?」
「えっ、……痕、……あります? 一応チェックしたんだけど」
 慌てる和紗が手で首筋を隠す。その姿にちょっと笑い、「こっちに来い」と腕を引っ張った。
「せっかくふたりきりなんだ。俺の膝の間に座れ」
「で、でも、会社なんだし……まだ昼間だし……」
「社長命令だ」
「う……」
 和紗はしばらくもじもじとしていたが、観念したのか、結城の膝の間に身体を割り込ませてきた。
 背中から抱き締め、首筋に熱いくちびるを押し当てる。こうすると、彼が自分だけのものになった気がして、すごくいい。
「だめ、です……結城、さん……また痕、ついちゃう……」
「俺の腕の中にいるあいだは名前を呼べ」
「……ッしのぶ、さん……ぁ、ぅん……っむ、胸、触ったら……ッ……」
 清潔な髪に頬擦りし、両手を胸に這わせてかりかりと引っ掻いた。少しずつ熱を孕んで硬くなる乳首がシャツを透かしてぷつんと突き勃っていることを知ると、もうたまらない。ネクタイをかいくぐり、シャツのボタンをいくつかはずして、熱く湿った肌に触れた。
「もう硬くなってるじゃないか……おまえはほんとうに感じやすくなったな」
「それは……っ……忍さんが、しつこくさわるから……あッ、あっ、あん、や、ぁ……だめ、こりこり、しないで……っ……」
「こりこりするのが和紗は好きなんだろう?」
「う、ん……好き、好きだけど、……おっぱい、……おっきくなっちゃう……っ……ぁ!」
 可愛いことを言うくちびるをふさぎ、舌を吸い合いながら、乳首を念入りに揉み込んだ。親指と人差し指でつまめるほどの大きさに育った乳首は結城の愛撫を悦び、ますます淫らな芯を孕んでいく。
「……ぁ、それ以上、したら……頭、おかしくなる……」
「どうしたい?」
 退く気はないけれど、そんなことを聞いてみる。股間をまさぐると、もうきつそうだ。ジッパーのラインに沿って指を這わすと、和紗の背中がせつなげに反り返る。
「教えてくれ、和紗。おまえの言うことをなんでも聞いてやる」
「う、……いじわる、……忍、さん……わかってる、くせに……」
 熱のこもる身体を焦れったく動かし、膝に乗った和紗が正面から抱きついてきた。
「……あなたの玩具にしてください……ここで、したい」
「最後まで?」
「……最後、まで」
 なんて素直で、可愛い花嫁か。
 毎日抱いているのに、いまもこうしていてうずうずしてくるのだから、恋とは少し怖くて、そして不思議なものだ。
 こくりと息を呑んだ和紗がくちびるをぶつけてきて、つたなく吸ってくる。その甘さ、その健気さに微笑み、結城はいいにおいのする首筋に顔を埋めた。