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10/1 J・GARDEN43

※小銭のご協力をお願いいたします。
※朝一番での万札はご遠慮下さいませ。
※すべて18禁です。

☆新刊☆
「オメガの休暇」(リブレ スラッシュノベルス『オメガの血縁』番外編)18禁500円
愛息の冬樹と穏やかに沖縄で暮らす秋生。ある日、鷹史の誘いで一週間の北海道旅行へ三人で出かけることになった。その地では、かつての同僚である郁島が笑顔で出迎えてくれて……? 三人のらぶめな後日談に交えて、郁島のその後も書いています。

☆既刊☆
「パパとあのことかわいいあのこ」28P 300円 18禁
「あなたの猫になりました。」(「今日から猫になりました。」番外編)500円
「Re:他人同士」(『他人同士』番外編)1000円
「愛してる&愛してる」(『誓約のうつり香』&『仮面の秘密』MIX番外編)300円
「真夏の誓い」(『くちびるに銀の弾丸』番外編 18禁)300円
「僕は南くんの犬です」(『誓約のうつり香』番外編)500円

※当日は、献本のプレゼントがあります。先着順でお渡しします。今回は時間の都合でサインが入っていませんが、当日お申し付けくだされば、手の空いているところでサインさせて頂きますので、お気軽にお申し付けくださいね。

※ペーパーはないと思います。

※書店委託はコミコミスタジオ様、フロマージュ様にお願いする予定です。

※新刊のサンプルは折り畳みの記事からどうぞ! 「え、……新婚旅行?」
「そう。北海道に行かないか。冬樹と一緒に三人で」
「行きたい! あ、もしかして昨日郁島からトウモロコシが届いたから?」
 突然の誘いに声が上擦った。
「あたり。あのトウモロコシ、甘くてみずみずしくて最高だよな。まだ残ってる?」
「まだまだあるよ。今日は焼きトウモロコシにしよう」
 弟の笑顔に、秋生もつい笑ってしまう。鷹史は大柄なせいか、大食漢なのだ。
 十月に入ったばかりの夜はまだまだ暖かで、みんな半袖姿だ。
「冬樹、飛行機に乗れるかな」
「一応調べたんだけど、生後八日からオーケーらしい。冬樹はもう生後半年だから大丈夫だよな。首もしっかりしてきたし」
「だね。……うわあ、旅行か。おまえとの旅行なんて、もしかして子どものとき以来かな」
 はしゃぎながら、秋生はキッチンに立って食器をゆすぐ。続きの間であるリビングで、鷹史は冬樹をあやし、「あー」と可愛い声を上げさせている。
「お父さんのこと好きか、冬樹」
 鷹史がもう何度目かわからない質問をしながら、冬樹のぷくぷくの頬を指でつつく。
「う」
「じゃ、こっちのお父さんのことは?」
「あ、あーあっ、あっ」
 冬樹が鷹史の腕の中から満面の笑みを浮かべて、こっちを振り向いたことで、「勝った!」と秋生は笑って泡だらけの手を挙げた。
 三人で暮らすこの家は、沖縄の北側にある。弟と経営する「澤野カフェ」は落ち着いていて、幸いにも地元のひとにも受け入れてもらえた。観光客もネットの評判を聞いてやってくる。とりわけ、鷹史が作るカレーとオムライスは絶品だ。オムライスには秋生がケチャップで絵を描く。猫を描いたり、花や星を描いたり。ちょっとしたことなのだけど、客はとても喜んでくれている。
 越してきて初めてわかったのだが、こちらだけの食材がたくさんあった。豊富な野菜しかり、魚は鮮やかな青や緑だ。最初はびっくりしたが、食べてみると淡泊で美味しい。味付けを工夫すればいくらでも食べられる。豚肉料理も美味しい。
『出産という大仕事を終えたあとの身体だからたくさん栄養をつけろ』
 鷹史はそう言って毎日美味しい料理を作ってくれるのだ。
 日本の南、暖かい場所で、傷ついた身体もこころもゆっくりと癒えていった。もちろん場所や空気も大事だけれど、なによりも薬になったのは鷹史の揺るぎない愛情だろう。綺麗な海と空が広がる場所で、秋生たちは第二の人生を切り拓いていた。目に入れても痛くない冬樹を交えて。
「おまえのせいで僕は太りそうだよ」
「そういう秋生もいい。抱き心地がよくなるんじゃないのか?」
 軽口を叩く鷹史に、夕食のあとのコーヒーを淹れて運んだ。
 冬樹もお腹いっぱいになったらしく、眠そうだ。鷹史の胸に顔をぐりぐりと擦りつけている。この仕草がふたりは大好きだった。頼られている、求められていることを実感できるのだ。
 冬樹の背中をやさしく撫でながら、鷹史はコーヒーを飲む。
「せっかくだから、あっちに一週間ぐらい滞在しようぜ。郁島に挨拶したあと、他のところにも足を伸ばしてもいいし」
「そうだね。郁島は帯広に住んでるから、先に札幌を観光しない? 有名な時計塔って一度は見たいし、ラーメンも食べたい。あ、朝市なんていうのもあるんだね」
 スマートフォンで「北海道 食」で検索すると、夕食後でもぐううと腹が鳴り出しそうなほど、魅惑的な料理の数々がヒットする。
「いくら美味しそう……」
「秋生大好きだもんな。たくさん食べよう。さっき、ツアーを検索しておいたんだ。飛行機とホテルだけ押さえて、あとはフリープランにしないか?」
「そのほうがいいかもね。冬樹もいるから、フレキシブルに動けたほうがいいと思う。でも、移動はどうする? 北海道って相当広いよね」
「大丈夫。俺が車を運転するからレンタカーを借りよう。うしろの座席で冬樹とゆっくり乗ってくれ」
「ありがとう」
 頼りになる弟に微笑み、隣に座った秋生は顔を近づけて軽くその頬にくちづけた。ちゅ、と可愛らしい音に鷹史は嬉しそうだ。
「もっとしてくれ」
「だめだよ。冬樹もいる」
「もう寝てる」
 言われてみると、冬樹はいつの間にかぐっすり眠り込んでいた。さっきの大好き勝負には勝ったが、寝かしつけることに関しては鷹史のほうが断然うまい。逞しく広い胸に抱かれていると、安心するのかもしれない。
「僕ももっとこう、広い胸だったらよかったな……」
 自分の薄い胸を見下ろしていると、鷹史がツンと人差し指で乳首のあたりをつついてきた。
「っ、こら……!」
「俺はこの胸大好きだけど。ちょっと噛んでやっただけで勃起するよな」
「お、まえ、だめだって、それ以上」
 すると鷹史が指で目元を擦ってきた。
「目、潤ませてるくせに」
「……もう」
 次第に身体が熱くなっていく。睨んでも説得力がないことは自分でもわかっている。
「冬樹、ベビーベッドに運ぼう。その次はおまえを抱っこしてやる」
「しなくてもいいです」
 そう言いながら、頬がゆるんでしまうのが抑えきれず、秋生は鷹史のがっしりした肩に顔を押しつけた。
 冬樹といい、自分といい、鷹史が好きすぎてしょうがないことが可笑しかった。